井上さん「山口県の空襲」研究成果を冊子に

戦時中、空襲で受けた山口県の被害の全容はどうであったのか。宇部フロンティア大付属香川高で地方史研究部顧問を務めた講師の井上実智夫さん(64)が、20年来の研究成果を冊子にまとめ、終戦記念日の8月15日に刊行しようと準備している。題名はそのまま「山口県の空襲」。これまで詳しく語られることがなかった動員学徒の被害や、宣伝単(びら)の散布も綿密に調査。市民の目線から戦争の実態に迫った貴重な記録になる。

県全体の空襲被害の記録は、県文書館に所蔵されている「昭和二十年長官事務引継書」の中にとじられた「敵機来襲状況」に記されている。しかし、当時の県知事(統監)である長官に報告された資料にも欠落した部分は多い。
井上さんは、アメリカが情報公開している当時の米軍資料を取り寄せ、日々の作戦や任務の内容と照合。さらに、可能な限り被災地へ足を運び、遺族や友人、学校関係者などから話を聞き、資料を補完してきた。
宇部市の空襲は8回にわたったが、犠牲者の実数は「宇部市史」の記載より27人多い349人(編入後の東岐波、西岐波を含む)であったことも突き止めている。
空襲被害の状況については、宇部日報の紙上で2005年に連載し、学校の文化祭や市立図書館で講演。「宇部地方史研究」でも発表してきたが、その後の研究で、動員学徒や宣伝単についても詳しい内容が分かった。「全てに注釈と解説を書くことができたので」と、調査に一応の区切りを付ける意味で製本化することにした。
内容は、敵機来襲状況の原文、空襲被害状況、動員学徒被害状況、宣伝単の散布状況の集計や注釈など。敵機来襲状況が記載された「警備隊引継書」と同じサイズのB5判で、60㌻程度になる予定。
「在校生である動員学徒と、学校によっては卒業生の扱いになる挺身隊(ていしんたい)や軍属の区別、集計が特に難しかった」と井上さん。
個人情報保護の壁に阻まれながらも犠牲者一人一人の足取りを追跡し、資料の所在を示せるようにした。
記録を通じて「戦争を風化させる以前に、戦争の現実を知らなければならないが、被害の状況を知ることさえ許されなかったのがあの時代」と、戦争の真のむごさを訴えていく。
冊子は公立図書館などへ寄贈する考え。

カテゴリー:教育・文化2012年6月6日

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