平等院鳳凰の扉絵修復、馬場さん独自の技術

絵の具がはがれ落ちそうな修復前(上)と鮮やかさが戻った修復後の扉絵 宇部市厚東棚井の日本画家で、文化財調査・復元の専門家、馬場良治さん(60)が、独自に開発した天然素材の溶液で、京都府宇治市にある国宝・平等院鳳凰(ほうおう)堂の扉絵の剥落(はくらく)を止め、同時に汚れを取り除くことに成功した。同院の研究紀要「鳳翔学叢(ほうしょうがくそう)」で発表し、画期的な修復技術として注目を集めている。

馬場さんが手掛けた「九品来迎図(くほんらいこうず)」は、正面中央扉を除き、一九六五年から七一年にかけて八面が復元模写されたものだが、経年劣化により顔料がはがれ落ちそうになるなど、損傷が激しかった。先に請け負った専門家が手に負えず、文様の調査で同院に入っていたところに依頼が舞い込んだ。
通常のにかわや合成樹脂で修復すると、湿気や気温の変化で亀裂が入るのが課題。馬場さんは魚の内臓やサメの切り身、戦前の古いにかわなどをブレンドして熟成させた微生物由来の特殊な溶液を用いた。
養生紙の上から塗ると、扉のヒノキ材にまで浸透し、剥落を抑え込むとともに、バクテリアの働きで表面の汚れや染みが分解された。湿気や気温の変化などにも強いという。二〇〇七年十月から〇八年八月にかけて作業し、剥落した個所には彩色を施して復元時の鮮やかさをよみがえらせた。
溶液は十五年前から作り始め、試行錯誤の末、修復に適したブレンドを確立した。三年前に手掛けた福山市の明王院五重塔(国宝)の壁画や絵画の修復で効果は実証済み。「魚のコラーゲンには計り知れない効果がある。昔ながらの保存食の技法、好きな料理などからヒントを得た。地方にいて、周りに自然があるから形になったと思う」と話した。
新しい技術として特許を出願している。「文化財の修理で全国の現場に入り、状態の悪い絵を多く見て、データも蓄積してきた。絵の具がはがれるのは自然なことだが、養生して次代に残す使命感、誰かが守らなければという思いは強い」と意欲を語った。
現在も広島市の不動院、下関市の住吉神社のほか、国宝五件、重要文化財三件に携わっており、溶液を活用したいとしている。

カテゴリー:教育・文化2010年5月8日

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