2011年12月22日

山大医学部、進行難治肝がんに「鉄キレート剤」

 山口大医学部の坂井田功第1内科教授らのグループは、抗がん剤が効かない進行難治肝がんに「鉄キレート剤」を使う治療法を世界で初めて開発した。このほど学内の倫理委員会の審査が終わり、臨床応用を本格的に開始した。

 肝がんで、全国で年間に3万5000人が亡くなる。特に山口県はC型肝炎から肝がんを発症する患者が多く、死亡率が高い。早期で発見されても約2割が再発を繰り返す。治療法は、手術や電磁波でがんを焼く「ラジオ波治療」などがある。
 手術の難しい進行がんは、抗がん剤を肝動脈から注入する化学療法が残されているが、これに反応しないケースもある。
 坂井田教授は、抗がん剤の代わりに「鉄キレート剤」を患者の肝動脈に直接、注入する方法を開発。臨床研究で、抗がん剤が効かず、肝硬変も進行している末期の患者10人に、隔日で平均27回、2カ月間にわたり実施。5人でがんが縮小したり、進行が止まったりした。重い副作用はなかった。
 このうち63歳の男性患者は、肝臓と肺転移したがんが、治療後2カ月でいずれも画像上、消失した他、三つの腫瘍マーカーが顕著に減少。一時期、社会復帰し、治療後20カ月、生存した。
 「鉄キレート剤」は、体内の鉄分を尿と一緒に排出する薬剤。体内に鉄が過剰に蓄積される疾患の治療に使われている。鉄代謝の研究を長年行ってきた坂井田教授は、肝がんの細胞増殖に多量の鉄が消費されている可能性が高いとして基礎研究を重ねてきた。
 8月に米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載。進行性肝がんへの鉄キレート剤の有効性を示したとして、世界から注目を集めている。
 坂井田教授は「治療の選択肢が一つ増えたと認識している。奏功したメカニズムの解明が今後の課題。効きやすい人と効きにくい人の違いの原因を突き止め、早期がんからの使用や抗がん剤との併用の可能性も探りたい」と話した。
 治療についての問い合わせは第1内科(電話22─2241・2243)へ。

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